
iPhoneの防水性能の基本を押さえる
iPhoneは「完全防水」ではなく、多くのモデルで“耐水・防塵”に対応しています。日常の水しぶきや不意の雨、キッチンの軽い飛沫には強い一方で、長時間の水没や洗剤・海水などの特殊な液体は想定外です。まずは“どこまで大丈夫か”“何を避けるべきか”の基準を理解し、余計な故障を防ぎましょう。
IP等級とモデル別の目安
耐水性能は国際規格「IPコード」で表記されます。iPhoneでは世代ごとに等級が異なり、同じIP68でも設計上のテスト条件(深さ・時間)が違う点に注意が必要です。ここからは、等級の見方と代表的な世代の目安、そして“耐水=保証対象ではない”という大事なルールを順番に整理します。
IPコードの読み方(IP67 / IP68)
IPの最初の数字は防塵、次の数字が耐水レベルを示します。IP67なら「粉塵の侵入を防ぎ、一定条件での短時間水没に耐える」、IP68なら「メーカーが定めたより厳しい条件での水没に耐える」という意味です。ただし“永続的に水中で使える”という保証ではありません。
モデル別・耐水テスト条件の目安
おおむねiPhone 7以降は耐水対応です。iPhone XS/11は最大約2mで最大30分、11 Pro系は約4mで最大30分、12以降(12/13/14/15の無印・Pro系)は約6mで最大30分という目安が公表されてきました。同じIP68でも“深さと時間の条件”が異なるため、古い機種ほど余裕を持って扱うのが安全です。
「耐水」と保証の関係
iPhoneは耐水テストをクリアしていますが、日常使用での経年劣化や落下でシールが弱まることがあります。さらに、アップルの限定保証や多くの延長保証は“液体による損傷”を保証対象外とするのが一般的です。耐水=無敵ではないと心得て、リスクの高い使い方は避けましょう。
やってよい場面・避けるべき環境を具体化する
耐水の限界を超えないためには、日常の“OK”と“NG”を具体的に線引きしておくのが近道です。次の小セクションでは判断に迷いやすい例を挙げ、実務的な運用ルールに落とし込みます。家族や社内で端末を共有する場合は、同じ基準で徹底するとトラブルが減ります。
日常で許容されるシーン
・雨の屋外使用、手洗い時の水しぶき
・キッチンの軽い飛沫、濡れた手で一瞬触れる程度
・汗や結露に対する短時間の曝露(ふき取り前提)
・洗面台に落としてすぐ拾い上げる程度の“瞬間的な水没”
避けるべき液体・状況
・海水、プール水、炭酸、ジュース、アルコール、オイル、洗剤水
・熱いシャワーやサウナ、スチームルーム(高温多湿・蒸気圧)
・水圧の高い噴流(シャワーヘッドを至近距離で当てる、ジェット洗浄)
・長時間の水没、川や海での撮影、入浴しながらの使用
濡れたときの正しい対処手順
万一濡れた場合でも、落ち着いて正しい手順を踏めばダメージを最小化できます。慌てて充電したり熱で乾かすのは逆効果です。ここでは“すぐやること”“完全乾燥のコツ”“再開タイミング”を分けて解説します。
すぐにやること(初動)
・電源が入っていればそのままにし、操作を最小限にする
・柔らかい布で本体・隙間・マイク・スピーカー周りを優しくふき取る
・Lightning/USB-C端子を下向きにして軽く手のひらに叩きつけ、水分を排出
・SIMトレイの開閉は不要(内部に水を誘導しないため)
完全に乾かすコツ
本体を風通しの良い常温の場所に立てかけ、数時間以上放置します。米びつに入れる、ドライヤーで温風を当てる、ヒーターに近づけると内部部品や接着剤を痛めるため避けてください。除湿機や扇風機の“常温風”は有効です。
充電・アクセサリ接続の再開タイミング
水濡れ直後の充電は厳禁です。端子が完全に乾くまで待ち、iPhoneが“液体の検出”を表示した場合は指示に従って時間を置きます。目安としては数時間〜半日程度、念のため長めに待つと安全です。
スピーカーや端子の水抜きと清掃
水没後は音がこもったり、マイクが聞こえづらくなることがあります。物理的にこじ開けず、外部からの軽い振動と常温乾燥で改善を図ります。水抜きは“やり過ぎない”ことがポイントです。
水抜きの実践手順
・スピーカー側を下にして手のひらで軽くトントン
・布で格子状の穴を押し当て、水分を吸い取る
・端子部は綿棒や金属でこすらない(繊細な接点を傷めるため)
・乾燥後に音のこもりが残る場合は、時間をおいて自然回復を待つ
やってはいけない乾燥法
・ドライヤーの温風・冷風を至近距離で当て続ける
・シリカゲルや米に長時間“密閉”して放置(結露や粉の混入リスク)
・エアダスターを吹き込む(内部に水を押し込む)
・端子にピンや紙を差し込む(端子破損・保証対象外になり得る)
保護アクセサリと日常メンテで“耐水力”を長持ち
ケースやフィルムは衝撃吸収や汚れ防止に役立ち、結果として耐水シールの劣化を遅らせる効果が期待できます。ただし完全防水ケースを付けたからといって、深い水中での常用が推奨されるわけではありません。ここでは選び方とメンテの要点をまとめます。
防水ケース・ポーチの選び方
・JIS/IECの等級(IPX7/IPX8など)表示のある製品を選ぶ
・水中操作より“落水時の保護”を主目的にする
・首掛けや浮力付きなど、紛失・沈没リスクを下げる機構を優先
・装着後は必ずティッシュで漏れチェックを行い、本番利用へ
日常メンテナンスで差がつくポイント
・落下や側面の凹みがある場合は早めに点検・機種変更を検討
・端子周りの埃をやわらかいブラシで除去し、蓋付きを乱暴に開閉しない
・海やプール近辺で使ったら、乾いた布で拭き取った後に真水で“軽く”湿拭き
・極端な高温(車内直射日光)を避け、接着剤の劣化を防止
シーン別:現実的な運用ガイド
水際での“つい大丈夫だろう”が最も危険です。次のシーンごとに、やってよい範囲と避けたい行為を明確にしておきましょう。社用端末の場合は、会社の端末運用ポリシーを常に優先してください。
ランニング・ジム・スポーツ観戦
汗や小雨は許容範囲です。運動後は必ず拭き取り、布製ケースは乾燥させます。ペットボトルの結露が端子に触れ続ける状況は避けましょう。
キッチン・アウトドア
油・調味料・洗剤は耐水試験の対象外です。レシピ表示やタイマー用途はスタンド+保護フィルムで、シンクや調理台の水はねを最小化します。アウトドアでは首掛けの防滴ポーチが安全です。
よくある質問(Q&A)
Q:お風呂で動画視聴は大丈夫?
A:蒸気・高温・シャンプー成分でシールが劣化するため非推奨です。どうしても使うなら浴室外からの視聴に切り替えましょう。
Q:海での写真撮影は?
A:海水と砂は腐食・摩耗の原因です。防水ポーチ越しに短時間だけ、帰宅後は乾拭きと軽い湿拭きを。直接の水没は避けてください。
Q:耐水は年月で弱くなりますか?
A:はい。経年や落下でシールは劣化します。古い端末ほど水場での使用は控えめに。
Q:スピーカーの音がこもる。
A:内部の水分が原因なら自然乾燥で改善することが多いです。無理にこじ開けず、常温で数時間置いて様子を見ましょう。
まとめ:限界を知って“壊さない使い方”へ
iPhoneの耐水は“うっかり”を救うための保険で、常用の水中撮影を想定したものではありません。IP等級とモデル差、NG環境、正しい乾燥手順を知っておけば、故障リスクは大きく減らせます。日常では飛沫レベルにとどめ、濡れたら拭く・乾かす・時間を置く。この基本を習慣化し、長く安心して使い続けましょう。
